「均一にしようとすると、糸が死ぬ」。ポルトガルのCasa Fiadaで、職人のアナがそう言いました。工業生産のコットン糸は、太さが完全に揃っています。均一であることが品質の証とされているからです。でも、手で紡いだ糸には、呼吸するような太細があります。それが布になったとき、光の当たり方によって微妙に表情を変える。
手紡ぎと機械紡ぎの違い ¶
工業的なコットン糸は、原綿を機械で引き伸ばし、一定の速度で撚りをかけることで均一な太さに仕上げます。これにより大量生産が可能になり、価格も安定します。一方、手紡ぎは人の手と足で紡ぎ機を操作するため、糸の太さにわずかな変化が生まれます。この変化が、布の表面に微妙な凹凸を作り出し、光の反射が均一にならない。結果として、同じ白でも、手紡ぎコットンは「深い白」に見えます。
アレンテージョという土地 ¶
ポルトガル南部のアレンテージョ地方は、夏は乾燥した熱風が吹き、冬は穏やかな気候が続きます。コットンの栽培には適した環境で、この地方では数百年前から綿花を育てる文化があります。Casa Fiadaのマリア・ジョゼは、祖母から受け継いだ紡ぎ機を今も使っています。機械を修理する職人もほとんどいなくなったため、壊れた部品は自分たちで作ると言います。
未漂白コットンの色について ¶
今季のシャツドレスに使用した未漂白コットンは、生成りとも白ともつかない色をしています。漂白処理をしないため、コットン本来の色がそのまま残っています。この色は、洗いを重ねるごとに少しずつ変化します。最初の一年は少し黄みがかった白、二年目以降は落ち着いた生成りに。経年変化を楽しめる素材です。直射日光に長時間当てると色が飛びやすいため、陰干しをお勧めします。
手紡ぎコットンのお手入れ ¶
手紡ぎコットンは、工業糸より繊維が緩やかに撚られているため、強い摩擦に弱い面があります。洗濯は手洗いが理想的ですが、洗濯機を使う場合はネットに入れてデリケートコースで。乾燥機は不可。脱水後は軽く形を整えて陰干し。アイロンは中温で、スチームを使うと皺が伸びやすいです。
手紡ぎコットンのアイテムは、今季のコレクションに二点あります。実物の質感は、写真ではなかなか伝わりません。ご来店の際に、ぜひ手に取ってみてください。